青い

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 夏休み前、すでに海には海水浴客が居て、砂浜は休みになると結構な混雑だった。それを横目に紗英は一人でいつもの場所へと向かっていた。  いっちゃんは最近部活がとても忙しい。大会で勝ち進んでいる為、一日おきにしかなかった部活が毎日になり、土日祝日も練習に明け暮れていた。 「サエ寂しくない? たまには応援とか来る?」  朝の通学時間が今では唯一の共有できる時間。そこでいっちゃんはサエにあれこれ聞いて来る。寂しくないか、暇なときは何をしているのか、夏休み空いた日が出来たらどこに行きたいのか。 「行かないよ。ルールも良く分からないし、私はいっちゃんみたいに頭が良くないから勉強しなきゃ」  紗英は自転車を漕ぎながら嘘を吐いた。それはさらっと口から出て、風に乗ってすうっとどこかに消えていくイメージなのに、いっちゃんはそんな紗英の嘘を捕まえる。 「勉強? なら、部活帰りサエの家に寄るよ」 「いいよ、疲れてるのに」 「でもさぁ」  バイトをしているのはまだ内緒にしているから、来られるとバレてしまう。だから紗英は「最近、お父さんの付き合ってる人が家に来るんだよ」とまた嘘を重ねた。いや、まるっきり嘘ではないのだけど……一度だけ来たのは本当で、それは紗英に挨拶に来たのだ。結婚するつもりでいること、その人はバツイチで小学生の娘が居ることを紗英の表情を覗いながら話していった。
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