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ハルは相談と練習をかねてセリーヌの所へやってきていた。
同じ男の踊り子として相談できる相手が嬉しいことだ。それに先の戦闘で、支援系の踊りだけでは不十分だと思った。回復系の踊りを早急に覚える必要がある。
「それでここの時の手はこう、足は開くのよ」
「は、はい!」
たどたどしい動きながら踊りを習得していく。回復系の踊りを学びたいと言った時は、上級者向けだから難しいよ、と脅されたがやってみると案外覚えられる範囲のものだった。
踊りのために毎日の鍛錬は欠かせていない。パーティーであるミカエルのためにも練習を怠るわけにはいかなかった。
「今日はここまでにしましょ」
「あ、はい、わかりました」
「今日のハルなんか変よ?何かあった?」
セリーヌが顎に手を当てながらハルを見つめる。ハルはなかなか言い出せずにいたことをゆっくりと口に出した。
「実はあの…パーティーメンバーに告白されまして」
「告白?パーティーってあの爽やかイケメンの勇者でしょ?それがハルに?」
「そうなんです。からかってるのかとも思ったんですけど、ミカエルがからかうような人間には思えなくて」
「いいじゃない、付き合っちゃえば?」
「でも、男同士ですよ?まだ女の子と付き合ったこともないのに」
「あら、男だと何がだめなの?」
セリーヌがハルの顎に手を添える。そしてくい、と持ち上げると息がかかりそうな距離で瞳を見つめられた。
「たとえば私はダメ?ハルは私のこと女だと思ってたでしょ?」
「それは、その、別問題というか。セリーヌさんは」
そこまでいったところで口を塞がれる。一瞬何が起こったのかよくわからなかったが、すぐにキスされているのだと分かった。心臓がドキリと跳ね上がる。
なんでキスされているんだ?ていうかセリーヌさんは何故キスしてるんだ?わけがわからない。
と、同時にミカエルにしたキスのことを思い出した。恥ずかしかったけど、柔らかい唇の感触はよく覚えている。
「っは、なんですかセリーヌさん!」
「私ハルのこと、気に入ってるのよ?」
「は?」
「ハルが勇者くんと付き合わないっていうのなら私が立候補しちゃおうかしら?」
「何言ってるんですか、セリーヌさんんっ」
再び口を塞がれる。舌で唇の上を舐められ、ぞくぞくと背中が震えるのが分かった。
「私結構肉食なのよ?」
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