64人が本棚に入れています
本棚に追加
その後も辛い対応は続いた。何度もさまざまなパーティーに紹介されたが、笑われるか怒鳴られるかの二択だった。あまりの挫折感に受付嬢に、もういいです、といいカウンターの一角で頭を抱えた。
パーティーを揃えて働かないと成人として認められない。重要な瀬戸際だったが、ハルはもう諦めかけていた。どうせこんな踊り子なんて誰も見向きもしない。一人で細々と仕事をしていくしかない。
「あの…」
「もういいですって、諦めます」
「いえ、あの、あなたを指名したいという方がいらっしゃいまして」
「えっ?」
ハルはあまりのことにポカンと阿保面を浮かばせた。僕を?指名したい?
意味が分からなかった。カウンターに座ってぼけっとしているとやがて一人の人物が現れた。
銀色の美しい鎧に身を包んだ肢体は細長く、金の髪の毛をなびかせた顔は彫刻のように彫りの深い顔をしていた。美男子とはこういうことを言うんだろう。
「やぁどうも、僕はミカエル。是非君とパーティーを組みたい」
「はい?」
ちなみにこの方勇者様ですよ、と受付嬢が耳打ちしてくる。勇者というのは限られた者のみがなれるジョブだ。心身共に鍛えた素晴らしい人間だけが得られる称号で、その多くは魔物退治で生計を立てている猛者達だ。成人になりたてのひよっこがパーティーを組める相手ではない。皆の憧れの職業なのだ。
なんでこんな人が僕を?疑問で頭がいっぱいだった。
「君はどうだい?パーティーを組む気はある?」
「ああああああの、僕なんかでいいんですか?」
「あぁ、君がいいんだ」
よく響くテノールボイスが耳朶を震わせる。さわやかな笑顔がハルに向けられた。
「僕なんかで良ければ…。ほんとにいいんですか?」
「勿論。君を歓迎するよ」
こうしてハルはパーティーメンバーを手に入れたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!