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「まずは僕の宿屋にきて身支度を整えよう。君も何にも装備を整えていないだろう?」
「はい、あハルって呼んでください」
ハルは内心ハテナだらけだったが、流れに沿うようにして事を進めていった。なんでこんな凄そうな勇者は有り得ない踊り子の僕とパーティーに?
そう考えると頭が痛かったがパーティーに入れただけ良しとしようと、ポジティブに考えることにした。しかも相手は勇者様、なんてラッキーなんだ。よし、ラッキーだと思うことにしよう。なんでとかは考えてもどうしようもないんだ、前だけ向いておこう。
ハルは頬をぺしんと叩いて勇者様の後ろに従った。
「そういえばなんとお呼びすればいいんですか?」
「ミカエルだ。呼び捨てでいいよ。敬語も使わないでくれ。せっかくのパーティーなんだ、気を遣わずにいたいだろ?」
「わかりま、わかったミカエル…さん」
「はは、段々と慣れてくれればいいか」
ミカエルは笑ってハルの頭をぽんぽんと撫でた。身長差が如実に現れて少しだけ悔しかった。
「さぁここが僕のとまっている宿屋だ。」
「わぁ…」
ハルの口から感嘆が漏れる。それは予想していた宿屋とは違って、とても高級感のあるシックな建物だった。入り口には赤い絨毯が敷き詰められ、受付では品の良い受付嬢が軽く頭を下げていた。
「ここにいつも泊まってるんです、泊まってるの?」
「あぁそうだよ。宿屋は初めてかい?」
「たしかにはじめてだけど…」
そんなレベルではない気がした。明らかに金がかかってそうな見た目だ。
「ジョブをはっきりさせるためにこの鎧を着てたけど、さすがに重いからね、ちょっと着替えさせてくれ」
そういってミカエルは宿屋の一室に入っていった。
カチャカチャと金属音を立てながら鎧を脱いで行く。露わになった肉体は程よい筋肉が付いていてとても美しい肉体だった。
鍛え上げられた肉体に思わず目を奪われてしまうハルは、男の体に何見とれてんだ、と自分を叱咤した。黒のシャツとスラックスに着替えたミカエルは、さぁ行こうかと手を差し伸べる。
思わずその手を取ってしまったハルはそのまま手を引っ張られ、手を繋いだまま街に出ることとなった。
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