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「じゃあ行こうか」
「はいっ!あ、うん!」
ハルとミカエルは戦闘服に着替えていた。ハルは水色の透け感のある衣装、ミカエルは美しい銀色の鎧を身に纏っていた。ミカエルはその整った顔立ちとスタイルの良さで鎧がよく似合い、とても勇者らしい出で立ちをしていた。
ハルはハルでまぁまぁ似合う不思議な感じに仕上がっており、この時ばかりは男らしい顔つきじゃなくて良かったと思ったのだった。
パーティーはまだ勇者と踊り子だけという歪な形だったが、とりあえずハルの初仕事として慣れさせる為に簡単な魔物退治の依頼を受けた。ミカエルはこれからまたパーティメンバーを増やしていくつもりだとはいっていたが、それはこれからだ。当面は二人で魔物退治をして日銭を稼ぎながらいい仲間を探すことが必要だった。
男の踊り子がいてもいい人、なんてミカエルの他にいるのだろうか、それが心配だったが、セリーヌという先輩がいることだし、なんとかなると思いたい。
「ここみたいだね」
「魔物、いませんね」
「餌を仕掛けて待とう」
ミカエルが生肉を取り出し、地面に仕掛ける。そして二人で少し離れた木陰に隠れた。待っている間少し時間があったのでハルは気になっていたことを聞く。
「あの、ミカエルはなんで僕なんかをパーティーに?ミカエルならもっと百戦錬磨の戦士とかでもパーティーに出来ただろうに」
「あぁ、それはね、僕もそのつもりだったんだけどね。何度も断られている君を偶然見つけてね、その様子に、とても可愛らしいと思ってしまったんだ」
「か、可愛い?????」
「見た目も仕草も、そこから垣間見える性格も、一瞬で全てが可愛いと思えた、端的に言うなら一目惚れだ」
「一目惚れ!?」
ハルはミカエルの言葉についていけず頭がグルグルした。可愛い?一目惚れ?それは、成人仕立てのぴちぴちな可愛い踊り子になら可愛くて一目惚れすることもあろうが、成人したてのぴちぴち踊り子(男)だぞ?ただの平凡顔の男子だぞ?男が男に言っていい台詞じゃないだろう。ミカエルは一体どういう感性をしているんだ?
ハルは思わず疑う目でミカエルを見たが、ミカエルはいたって真剣そうだった。理解は出来ないが、本当にそういうことなのだろう。
「ハル、ほら魔物だ、出てきたよ」
「出番ですね!」
二人は草むらから飛び出し、魔物と対峙した。
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