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ミカエルがゆっくりと目を覚ます。
「ミカエル!大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ」
ミカエルはすっと立ち上がると、ダメージなど無かったかのように姿勢を正し、剣を構えた。残りの二匹が飛びかかるのに合わせて斬りふせる。一瞬だった。魔物が地面に倒れ、ミカエルが剣を収める。
「ミカエル!」
ハルは思わずミカエルに飛び付いた。傷のついた鎧を撫で、ミカエルの表情を覗き見た。
「痛くない?」
「大丈夫だよ、かすり傷さ」
「良かった~心配したんだ本当に」
「あの程度の魔物にダウンしてしまうなどお恥ずかしい限りだ」
しかし、とミカエルが魔物を袋に入れながら言う。
「ハルのキスは何だったんだい?あれをされたら力が漲って元気が出たよ」
「えっ!!!起きてたんですか?」
ハルは気絶していたとばかり思っていたので自分のした行為に恥ずかしくなる。必死で仕方なかったとはいえキスはキスだ。しかもハルにとってはファーストキスだった。
「あの、あれは踊りの効果を高める行為で、決して変な意味ではなくてですね」
ハルは慌てて顔の前で手を振った。顔が熱い。恥ずかしさで心臓がばくばくというのがわかった。
「そうだったのか。なんとも粋な計らいかと思ったよ。ハルにキスしてもらえるなんて役得だ、嬉しいよ」
「えっ!?気持ち悪くないの?」
「まさか。好きな人からのキスが嬉しくないわけないよ」
「す、好きな人?」
ハルの頭が混乱する。好きな人ってどういうことだ?
「そういえばまだ言ってなかったね」
ミカエルは魔物の入った袋を担ぎ、ハルの前に立つ。
「僕はハル、君のことが好きだよ。人としても、恋愛相手としてもね」
「えっ…?」
「さぁ行こう。成果を報告に行かなくてはね」
ぽかん、とほうけるハルの手を引いてミカエルが歩き出す。その顔には爽やかな笑みが湛えられている。
「ええーっ!!!!!本当に言ってますか!?からかってない?」
ハルはやっと意味を理解してミカエルに詰め寄る。ミカエルはただハハと笑ってハルの頭を撫でるだけだった。
好きだなんて。ハルもミカエルのことは人間として好きだったが、恋愛対象としてなんて言われたのは初めてだ。女の子にも言われたことがないのに。はじめて告白されたのがこんな爽やかイケメンだなんて。嬉しさと困惑でハルは頭がこんがらがるのだった。
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