第三話

3/11
前へ
/131ページ
次へ
 今の家は、息が詰まる。亜貴くんに嫌われないように、ってそればっかり気を付けてるから、しんどい。 「ゆっちゃんは、イチイチ俺につっかかってくるよな。そんなに俺の事好きなの?」 「ち、ちっ、違うわよっ。つっかかってなんか無いしっ!」  何言ってるのよ、壮くんったら! す、好きだなんてっ!! 冗談でも言っちゃダメでしょっ!  私、一応旦那いるのよっ。全然愛して貰ってないケドねっ。 「ホラ、つっかかってるしっ!」  壮くんに、私の口調を真似された。 「真似しないでよっ!」 「真似してないしっ!」  またまた、私の口調を真似された。 「もうっ!! 壮くんっ!」私は怒った。 「あははははっ、もー、ゆっちゃん、マジサイコー」  くしゃくしゃと頭を撫でられた。  壮くんは、からかいながらも私の事を優しい眼差しで見つめてくれている。  あったかいな。無理せず等身大で言い合えて、こんなに怒って笑ったの、何年ぶりだろう――・・・・ 「あはは。本当、楽しいね! 壮くんも全然変わって無いしっ」  でも、再び心のこもらない笑顔になった。亜貴くんとの夫婦生活で仮面をかぶり続けて来たせいで、随分偽物の笑顔が上手くなって、こんな笑顔しか出来なくなってしまったんだ、私。  
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

691人が本棚に入れています
本棚に追加