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今の家は、息が詰まる。亜貴くんに嫌われないように、ってそればっかり気を付けてるから、しんどい。
「ゆっちゃんは、イチイチ俺につっかかってくるよな。そんなに俺の事好きなの?」
「ち、ちっ、違うわよっ。つっかかってなんか無いしっ!」
何言ってるのよ、壮くんったら! す、好きだなんてっ!! 冗談でも言っちゃダメでしょっ!
私、一応旦那いるのよっ。全然愛して貰ってないケドねっ。
「ホラ、つっかかってるしっ!」
壮くんに、私の口調を真似された。
「真似しないでよっ!」
「真似してないしっ!」
またまた、私の口調を真似された。
「もうっ!! 壮くんっ!」私は怒った。
「あははははっ、もー、ゆっちゃん、マジサイコー」
くしゃくしゃと頭を撫でられた。
壮くんは、からかいながらも私の事を優しい眼差しで見つめてくれている。
あったかいな。無理せず等身大で言い合えて、こんなに怒って笑ったの、何年ぶりだろう――・・・・
「あはは。本当、楽しいね! 壮くんも全然変わって無いしっ」
でも、再び心のこもらない笑顔になった。亜貴くんとの夫婦生活で仮面をかぶり続けて来たせいで、随分偽物の笑顔が上手くなって、こんな笑顔しか出来なくなってしまったんだ、私。
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