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「俺は変わらないけど、変わったのはゆっちゃんだろ。何、無理して笑ってんの? 何か、辛い事あった?」
「壮くん・・・・」
「亜貴のコトで、悩んでるんだろ? 話せよ。顔に書いてある。俺が気づかないとでも思った?」
思わず息を呑んだ。どうしてこの人は、こんなに私の心を見抜くのが上手いのだろう。
亜貴くんに、そうやって見てもらいたいのに、もう何年もこんな状態で放っておかれたのに、壮くんはどうして、たった一時間足らずで私の笑顔が偽物だって、心が悲鳴を上げてる事に気が付くの――・・・・
涙が、零れ落ちた。
「場所、変えよう。俺、実はゆっちゃんと久々に飲んで酔っぱらって打ちあがるつもりだったから、奥さんにも断って、ホテルの部屋取ってるんだ。そこで、話しよう」
私の様子を見て、深い話になると踏んでくれたのだろう。壮くんは私の肩を抱いて、予約しておいたというこのホテルの部屋まで連れて行ってくれた。
案内された部屋は広めのシングルルームで、ラウンジと同じように外の景色が一望できた。壮くんは先ず、私をソファーに座らせてくれた。
「お姫様、まずは涙を拭きたまえ」
ヘンなセリフで私を笑わせようとして、カッコイイ執事のようにうやくやしく私の手に口づけを落とし、そっと涙を拭ってくれた。
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