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「俺の口からは、これ以上言えない。見る勇気があったら――」バン、とソファーの前のガラステーブルに、そのしわになった写真を裏返し、壮くんが叩きつけて私の前にズイ、と押し出してきた。「見なよ。裏切りが赦せないなら、一緒に考えよう。勇気が無いなら、もう、今日はこのまま、家に帰れよ」
私は迷った。こんな厳しい顔をしている壮くんを、見たことが無い。
いつも優しくて、あたたかい笑顔しか見た事がなかったから。
ドキン ドキン
耳の奥で心臓が鳴っているのではないかという位、激しく、煩く、ドキドキしていた。
怖い。
怖い、怖いっ!!
一体、何が映っているの?
裏切りって、どういうこと?
そんなに赦せないことなの?
見る勇気は・・・・正直無い。でも、このまま帰りたくない。
このまま帰っても、こんな事を壮くんから聞かされたんじゃ、もう、亜貴くんの事、ちゃんと見れないと思う。
私は固まって、裏返された写真の白い部分を呆けて見つめた。
どれくらい時間が経ったかは分からない。でも、結構な時間は経ったと思う。
写真を表向きにして映っている内容を見る勇気も無く、帰る勇気も無い。怖くて震えてきた。
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