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「もう見るな。ゆっちゃん、俺が言った今の事は、忘れて」
壮くんが、裏向きの写真を取り上げようと手を伸ばした。
「待って!」
私は右手で伸びて来た壮くんの手を取って、左手で写真を引っ掴んだ。
このまま悩んでいても、無理だもん。勢いで写真が見えるように、自分の方へ慌ててひっくり返して向けた。
写真を見た瞬間、時が止まった。
そこに映っていたのは、亜貴くんと、亜貴くんに腕を絡めている、長いストレートの漆黒の髪を靡かせた、綺麗な女性。
背景は――どこかのホテル。そこから出て来たところだと思われる写真だった。
「その女、俺の奥さん」
「えっ・・・・?」
ドクン ドクン ドクン ドクン
鼓動が、やけにうるさい
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