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「ごめん、このことは一生ゆっちゃんには言うつもりなかったんだけど・・・・気にすんなよ? 俺が勝手に好きだったんだ。でも、やっとゆっちゃんの事諦めて、やっとゆっちゃん以外の女を好きになれて、結婚までしたってのに・・・・酷いよなあ? 俺、親友と奥さんから、いっぺんに裏切られてっ・・・・悔しい、もう死にたいって思った。この事を知ってからはずっと、地獄の日々だった」
壮くんは淡々と話しているけど、多分、すごく苦しんだだろうな。
自分の事があまりうまく考えられなくなったから、壮くんの苦しい表情を見て、そう思った。
私は黙って涙を流し続けた。
「苦しみばかりが溢れて、俺も最初この事知った時、一人で取り乱したんだ。全部忘れたくて暴れて・・・・そのうちだんだん、二人が赦せなくなった。だから、ゆっちゃんにこの事伝えて、どうするか相談したかったんだ。でも君は、俺以上に亜貴にひどい目に遭わされてて・・・・亜貴と一緒になって、君は幸せだって勝手に思ってた。気づけなくて、本当にごめんな。こんな事なら、亜貴に託すんじゃなかった。遠慮しないで、俺が攫ってれば良かった・・・・」
頬に手を当てられ、溢れる涙を拭ってくれたかと思うと、壮くんの顔が近づいた。
「そうく――・・・・っん・・・・」
あっ、と思った瞬間だった。壮くんの唇が、優しく私の唇に触れた。熱くて、柔らかい唇。
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