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「なるほどね」と、和人は言った。
「千咲と付き合ってた頃、この子は本当に俺のことが好きなのかなって感じてた。どこに行くにしても、なにをするにしても、何でも良いって言ってた」
空っぽだったんだな――その言葉の揺らぎが、もう取り戻すことが出来ないほどに、私の魂を砕いた。
相手の形に、自分の形を合わせる。どろどろに解けて密着して、相手の形を模倣する。衝突はしない。それが私の愛し方だった。輪郭を失った私の魂は、私の生き様そのもので、だから容易く人の形を失うことが出来た。いや、元より形などなかったのではないか。では、私はいったい何者なのだろうか。私は何なのだろうか。私の定義は。私の名前は。
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