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心が揺れ動く感覚を、私は知らない。
私は、どういう人間なのか。それは私の形から推し量るしかなかった。可愛らしい女の子だから、淡いピンク色が好きなのだろう。デザートが好きなのだろう。ラヴソングが好きなのだろう。そして、クラスで一番の人気者が好きなのだろう。私は、自分の形に合わせて、そういうものが好きであるということにしておいたし、時々ではあるけれど、私はそういうものが好きなんだと心から思うこともあった。けれど、それはマヤカシだったと、形を失った今なら分かる。
私の魂は、何も求めていない。
けれど、求められてもいないようだった。
しばらくして、私は行方不明者から死者へと扱いが変わった。私の死体はないまま、葬儀は執り行われた。私という存在は、こうして社会的にも形を亡くした。母と父は、泣いていた。しかし心から哀しんでいるわけではなかった。
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