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私の恋人だった和人も、しばらくして新しい恋人を見つけた。
よりにもよって、その相手は、私の妹である千聡だった。
私の死を乗り越えられるようにと、千聡は和人の傍にいて支え続けていたようだった。二人の交流というのは、私の時とは明らかに違っていた。二人とも心から愛し合っているようだった。取り繕うこともなく、互いを求め、欠けていたピースを埋め合うような必然性があった。「こんなことを言っては、不謹慎なのかも知れないけど」と前置いて、和人は言った。
「千咲がいなくなってくれて、良かった」
その、あまりにも配慮の欠けた一言を、千聡は笑って受け止めていた。
「私も同じこと、思ってた」
二人の間には、倫理や道徳などはなく、けれどそれは許されていた。二人の世界だから、許されていた。不道徳なことであっても、互いの心を分かり合っていて、それは人間誰しもが抱く気持ちなのだからと許容し合っていた。和人と千聡は、心の深く深く、奥底で固く結ばれていた。そこに形などありはしないのに、結ばれ合った魂が見えるかのようだった。
私の魂は、霧散してゆく。
ばらばらに、ばらばらに。
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