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「…いやいまじゃなくてだな………何歳のときの、どういう場面で」
卒業アルバムを撮る前と告げると、目の前の男性はもしかしてという顔で口を開いた。
「中三の10月か。んで時間は午後。場所は3階の西階段」
「そうです!そう!」
思わず身を乗り出してしまった。まさかさっきの出来事を知っているとは思わなかった。
「あん時って…まじで15年前のできごとを言っているんか」
「15年前じゃなくてさっきなんですけど」
「さっきじゃねぇ。15年前が正しいんだよ」
「どうしてそう言いきれるんですか!?」
つまり男性はわたしが15年前のことを昨日のように話していて、その間の記憶がないと捉えているようだった。
そんなわけがなかった。だってあの浮遊感ははっきりと思い出せる。
記憶がないならそんなにはっきりとあの感覚を覚えているだろうか。
「…お前も薄々気づいているんだろ。認めたくないだけで。じゃあいまのお前の姿はどう説明できる?15歳には到底見えないけどな」
ぐっと言葉に詰まる。
確かに先ほど姿鏡には15歳のわたしはいなかった。ずいぶんおとなの姿だった。30歳といわれても違和感がないような姿だった。
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