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「ん、これうちのお味噌汁の味!」
飲んでびっくりした。この絶妙な味、まさにわたしの家のお味噌汁そのものだった。
「おまえが作ってたんだ、毎日食べてたらそうなるだろうよ。…メシ食ったら、出かけるぞ」
出汁巻きまである。どんだけ料理上手なの須佐くん。
「え、どこに?」
「病院」
「……」
確かに須佐くんからしたらそういう行動をとるのは理解できなくはない。理解できても納得はできないことってあると思うんだけど。
「…おかしいことなんてひとつもない」
おかしいのは周りの状況だ。わたしは正常だ。それを証明してみせる。だからおとなしく従うことにした。
「…つべこべ言わずにさっさと食え」
つべこべ言わずに食べた朝食は、思いのほかおいしかった。
問答無用というか、いまのわたしには須佐くんしか頼れる相手はいないから、おとなしく従うことにした。無一文だし。
車で向かった先は何階建てか分からないくらい大きな病院、大学病院だった。初めて来た。かかりつけの病院は町の診療所といった感じのところだったから、物珍しさにあたりをきょろきょろと見渡してしまった。おのぼりさん丸出しである。
待合室で須佐くんの隣に座る。
「須佐さん、須佐佳奈さん」
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