タイムトリック・パニック 3

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 看護師さんがカルテ片手に名前を呼ぶ。 「はい」  突然須佐くんが立ち上がった。え? 「おい、呼ばれてんぞ」 「はあ?」  呼ばれてませんけど。勘違いじゃないの? 「…お前はいま『須佐佳奈』なんだよ」 「……………あ」  須佐くんの言い分を信じれば、わたしは須佐くんと結婚している。つまり「佐藤佳奈」ではなくて「須佐佳奈」になるんだ。  ぐいっと腕を引かれて須佐くんの後について診察室へ入っていく。 「どうぞ」  中にいたのは優しそうな、多分須佐くんと同じ年齢くらいの女医さんだった。椅子を勧められて腰掛ける。須佐くんは隣で立ったままだ。 「お久しぶりです」  ……お久しぶり?須佐くんと女医さんは面識があるのか。知り合い? 「その後体調のほうはどうですか」  にこにこと先生が話しかけてくる。その後? 「それが、」  須佐くんが昨日のことを順序だてて話し始める。  帰宅したら様子がおかしかったこと。話を聞くと15年前のできごとをさっき起こったかのように話すこと。15年分の記憶がなくなっていること。  徐々に先生の顔が険しくなっていく。  わたしおぼえている限りのことを必死に話す。だっておかしいのはこの状況なんだから。 「……念のため、検査しましょう」     
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