タイムトリック・パニック 3

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 検査でも何でもうけてやる。おかしいことなんてひとつもないんだから。  診察室を後にして今度は脳の検査をする部屋へと案内された。 「ねえ須佐くん」 「なんだ」 「頭おかしくなったなんて思わないでね。おかしいのはこの状況なんだから」 「……わかったから、おとなしく検査を受けて来い」   「脳に異常は見られません。一種の記憶喪失でしょう」  女医さんは検査結果をみてそう言った。 「記憶喪失…」  隣に立つ須佐くんが納得といったような顔でうなずいた。 「なにか強いショックがあって、一時的に脳が混乱しているようです。時間が経てば思い出しますよ」 「思い出す…」  思い出すも何もないものは思い出せない。けれども先生と須佐くんの間で話は進んでいく。 「大丈夫ですよ、こういうことはわりとあるんです」  わりとあるとか、大丈夫とか、いまのわたしは全然嬉しくない言葉だ。 「普通に生活してください。あと、いつもの薬も出しておきますから、必要なら服用してください」 「…いつもの?」 「必要ならば、なので旦那さんお任せします」 「佳奈、あとで詳しいことは話すから」  「あくまでゆっくりと、でお願いしますね。混乱してしまいますから」  十分混乱していますなんて言えない雰囲気だ。    会計を終えて、車に乗り込む。     
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