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タイムトリック・パニック 4
「………え?」
言っている意味が分からない。
「なに言っているの。冗談でも言っていいものと悪いものが」
声が震えてきた。怒りとも悲しみとも違う何かがわたしを突き動かしている。
「もう一度言う。お前の家族は、亡くなったんだ」
ゆっくりと、一言一言をはっきりと口にする須佐くん。
「…ウソ!」
「ウソじゃない」
「信じられない!」
須佐くんの顔は真剣そのものだ。
「信じられなくてもなんでもこれが現実だ」
「そんな現実知らない!」
朝、いつものように食卓で新聞を読んでいたお父さん。いってらっしゃいと見送ってくれたお母さん。鮮明に覚えている。
それが、なに。居ないの?
そんなバカな話があるわけない。
「家に行く!連れて行って!」
「…家はないぞ」
「ウソ!この目で確かめないと信じないからね!」
はあとため息一つついて須佐くんはアクセルを踏んだ。
そこにあるはずのモノが無かったときの衝撃をどう表現したらいいのだろう。
家があるはずのところは、コインパーキングになっていた。
「ウソ…」
わたしが小学校に上がるときに購入した白い外観の家は、きれいさっぱり無くなっていた。
その場に座り込んでしまう。
「……帰るぞ」
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