地方勇者の闇

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 単純にいう事を聞かない勇者は面白くない。別に勇者でなくても、若い人間に自分たちのやり方を変えさせられるのが嫌。  勇者を補助金のダシには使いたいが、変に名前を上げて権限を持たれるのは面白くないのだ。  たかが町の近くにある小さなダンジョンのボスを倒したぐらいで、と思うかもしれないが、それを上回る功績を出した者が、この町にはいない。  町の出身者で、最後にダンジョン攻略が成功したのは50年も前で、それが今の町長。  もし、ボスを倒せばそれだけで功績が並ぶことになるので、そいつに忠誠を誓っている役員共々必死に妨害するわけだ。  別に勇者に限ったことではない。  自分たちの引いた線の中にいれば可愛がるが、少しでもそこから手や足を出すと、鬼の形相で食って掛かってくる。  正しい進言だろうと、自分たち違うやり方は徹底的に邪魔をする。家族を使って恐喝まがいのことすらする。   しかも。しかもだ。  若者の活躍出来る町づくりなどと、その若者に圧力をかけたのと同じ口で言うわけである。  ちゃんちゃらおかしい。  対外的に面倒見のいい大人、だけは気取りたいらしい。  少しでも意見すると、最近の若い奴はなどと愚痴るくせに。  ただ、自分たちが死ぬまで、こき使いたいだけのくせに。     
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