1人が本棚に入れています
本棚に追加
何より呆れかえったのは、当人たちはそれが当然だと思っているどころか、自分たちが町のためになる正しいことをしている、と思っているらしいということだ。
彼らのしていることは、どう考えても既得権を守るための保身。そのためなら町が魔物に襲われても構わないという、どうしようもないもの。
あまりにもバカバカしい話だ。
自分が生まれ育ち、のどかで、それなりにいいところだと思っていた場所は、実は既得権益の亡者が食いつぶしていて。
俺はたまたま既得権側に都合がよかったから、大目に見られていたにすぎない。
格安の給料すら、彼らにとっては温情からくる施しのつもりだったのかもしれない。
その事実を認めるのは、なかなか惨めなものだったが、ある意味すっきりした。
こんな町に若い奴が寄り付くわけがない。
友達も出て行って当然。
それでも俺はもう少し、一応愛着というものもあるし、しばらく町にいようかなと思っていた。
だがそれも、母親が夕飯時に放った一言で崩れた。
「最近はまた大人しくしてるみたいけど、もう面倒おこさないで頂戴ね。それと、みっともないから早く痩せなさい」
母としては、何の気なしに言った言葉なのだろう。
今まで通り、息子に対する小言を言うように。
最初のコメントを投稿しよう!