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だが、今まで俺が悩んでいたことが、肥満と同程度のことと認識されていたことはショックだったし、みっともないからさっさと痩せろという言い草にも腹が立った。
そもそも太ったのは、町人に監視されて外に出られなかったからだし、そのときには何も言わなかったじゃないか。
ぷちん、と音を立てて何かが切れた。
嫌な役員の老人。去っていく友達。そのうえ家族も味方でないなら、この町でするべきことなんか何もない。
自分さえも心底、どーでもよくなり、俺は家を出た。
国境沿いにある小高い山に、ものずばり『樹海』と呼ばれている深い森がある。そこに行こうと思った。
どこの国の物でもない微妙な位置にある土地だ。
誰の迷惑にもならず、孤独に死ぬには良い場所だと思う。
数日かけて、俺はそこに向かった。このとき何を考えていたのか、正直ほとんど覚えていないが、ただ消え去りたいという気持ちに支配されていた。
山に入った俺は、獣たちが踏んだ道に従って辛うじて歩いていた。死ぬ方法は考えていなかったが、足場が悪いと自殺も上手くいきそうにない。
最悪このまま野垂れ死にでも、と考えていたところで、鬱蒼とした木々の中に丸く穿たれた、芝の広場に出る。
さらさらと枝木が揺れて、心地のいい風が吹き込んできている。
ここまでの疲れに誘われるように、広場の芝に大の字に寝転んだ。
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