あの日捨てたもの

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あの日捨てたもの

「影を売った男」という話がある。お金に目がくらみ影を売った男が、皆から嫌われるという話だ。役に立つと感じないようなのものでも、皆が当たり前に持っているものがないと不気味がられる、とかなんとか…… さて、あなたなら取り引きを持ちかけられたらどうするだろうか。実際にそんな危なそうな人に声をかけられたら可及的速やかに人の多い通りに出ることをお勧めするが。ともかく、あなたは影を売ってもいいと思うだろうか。僕には、夏の特番で怪奇現象として全国のお茶の間にお届けされてしまうくらいのデメリットしか思い浮かばなかった。 つまり、僕はあの日いくらかのお金と引き換えに影を捨てたのだった。ちなみにお値段七千円。高いとも安いとも言いがたい微妙な買取価格である。幸運の金袋はどうしたのか……     
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