アイザワさんとアイザワさん

「かしこまりました」

『分析』とは、過去の売り上げやデータを元にして各商品の注文数を決めていく、という作業だ。

これがうまくいかないと在庫がだぶついたり、賞味期限が切れて大量に廃棄する商品が出てしまう。

店の利益にも繋がる大事な作業で、実力がはっきりとわかる作業でもある。

生方のお父さんだって、実力者だったはずだ。その証拠に毎年きちんと利益を出していた、と聞いている。

しかし、相澤の分析は度を越えていた。

だぶつきや、廃棄するものがほとんど出ないのだ。

それがどれだけ凄いことかは、6年もここに居れば『使えないヤツ』でも、さすがに分かる。

「コイツ、優秀なんでね」とオーナーが言っていたけど……こんだけ仕事できたら経営側に引っ張りたい気持ちも分かるなー。

相澤店長の年は33歳だって挨拶の時に聞いた。今までどんな仕事をしてきたのかは知らないけど、顔も良くて仕事もできるなんて、ずるい。

そして、相澤の『度を越えている』点はもうひとつあった。

一緒に朝日勤シフトに入った時のこと。

「……何か、最近女性客増えてません？」

私は相澤にずっと心の中で思っていたことを聞いてみた。