「かしこまりました」

17/18
844人が本棚に入れています
本棚に追加
/355ページ
とりあえず、謝るに限る。 「……すみません」 ぱっ、と時計を見る。 シフトに入る時間が迫っていた。 『やらかし』た上に、遅刻なんてできない。 「しっ、失礼します!」 私は、慌ててロッカーへと向かった。 最近、やっと新体制が整ってきた。 便宜上は週休2日でも、毎日店に顔を出さなければいけなかった今までと違って、6月に入ってからは週1日くらいは休むことができていた。 私は、その相澤の7日間のうちのたった1日のお休みの日によりによって発注のミスを『やらかし』たのだ。 さらに、不運なことにその日は鞠枝さんもお休みだった。 やってしまった…… そう思ってももう遅く、夕方に入荷したマーマレードジャムをぼんやりと見つめる。 コンビニではこれくらいの量でも過剰在庫になってしまう。 イチゴやブルーベリーなら何とか売れる。 ジャムは賞味期限が長いから。 だけど……マーマレード……は売れないよなぁ。 ……買い取りだな。と覚悟を決める。 しばらく朝ごはんはパンで、マーマレード祭りだ。 私は半分だけ売り場に並べると、そのまま残りは箱から出さずにスタッフルームのほうへと寄せた。 ……さ、働くか。 ミスは反省してるけど、落ち込んでいる気持ちはさっさと忘れるに限る。 前向きに、前向きに。 私は落ち込む気持ちを振り払うように、しばらく仕事に没頭した。
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!