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でも僕は、そんな境界線上に存在するような町が嫌で、子どもの頃からずっと、早く大人になってこの町を出て、都会に行って暮らしたいと思っていた。
高校を卒業後、両親の反対を押し切って東京の大学に進学した。初めてのひとり暮らし、初めての都会暮らしは僕にとっては何もかもが新しくて、眩しかった。未来は明るく輝いていると信じて疑わなかった。当時は、高校時代から付き合っていた彼女がいたので、夏休みや連休があれば、故郷へ帰り、彼女に色んな話をした。アルバイトの時給が異常に高いとか、埼京線の通勤ラッシュで地上から五センチほど浮いたとか、まだ芸能人に会ったことはないだとか。彼女は楽しそうに僕の話を聞いてくれた。
大学三年になり、就職活動や卒業研究が始まってくると、彼女とは疎遠になっていった。そのうち全くこちらから連絡しなくなり、彼女からの電話も、面倒になって時々しか出なくなった。段々と連絡の頻度が少なくなり、自然消滅という良くある流れだった。
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