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 大学生活は順調だったが、就職活動は難航した。就職活動に関しては、実家が東京にある人間とはスタートが違っていた。彼らは忙しく活動的に働く人を日常的に見て育っている。両親や親戚、その兄弟。だからこそ、都会で働くというのが初めからリアルなのだ。安い給料に文句を言いながら一軒家に住み、家でペットボトルの焼酎を飲むような人しか知らないような僕にとっては、全くの未知の世界だった。  この世界観のずれを跳ね除けられるほど、僕は賢くなかった。必死に履歴書を書き、妥協点を探し、卒業ギリギリのタイミングで仕事が決まった。  社会人になり、目が回るような量の仕事をこなした。毎日通勤ラッシュに揉まれて出社し、終電で帰宅する。完全なオーバーワークだったが、人が足りないというのでどうしようもなかった。あれだけ就職活動で切り捨てられる人間がいるのに、人が足りないというのはどういうことなのかと思ったが、僕は田舎に帰りたくないという一心だけで、仕事を続けた。時々トイレで吐いた。それまでは飲み会でしか飲まなかった酒を毎日飲むようになった。  ある日、目が覚めると、急激な倦怠感に襲われた。意識はあるが、脳がゼリーのようなもので包まれてしまったかのように、思考がぼんやりとしている。起き上がろうとしても、身体が言うことを聞かない。どうしようもなかったので、初めて自分の意思で仕事を休んだ。その日は一日、全く同じ体勢でベッドに横たわっていた。     
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