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十数年ぶりに降り立った故郷の駅は、自分の記憶とは全く違った姿だった。線路は高架され、手作業だった改札は自動になっている。たった一つのスーツケースを転がしながら、懐かしさを感じない駅から外に出る。駅前の広場を見渡すと、僕が住んでいたころにはなかったビルやマンションの数々が、僕の記憶にある風景を上書きしていた。
十五分ほど歩いてやっと、見慣れた風景に出会えた。国道の向こうに、疎らに瓦屋根の家。それぞれの家の前にはたくさんの車が駐車されている。この町は車がないと生活にならないので、一人一台車を持っている家が多かった。そして家の向こうには一面に広がる水田と畑。小さな山々が並び、さらにそれらを見下ろすように一段と高い山がそびえたっている。
実家へと向かう途中、思いがけず、見知った人物が通りかかった。高校生の頃、付き合っていた彼女だった。彼女との付き合いは、お互いの心が自然と離れて行ったのだと思っていたので、それ程意識もせず、彼女に挨拶をした。
「いつ……帰ってきたの?」
彼女は死んだ人間でも見たかのような表情をしていた。そして、僕と目を合わせずにこう言った。
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