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「それにしても、あの私立探偵を正式に警察が雇うことになるとは……。警視総監も随分と思い切ったことしましたね」
「そりゃあ、俺が掛け合ったからだ。新聞記者どもが警視庁に押しかけている時だったからな。気が触れそうな時に言われて、訳も分からず頷いちまったんだろうさ」
フレミングは片眼鏡をあげながら眉根を寄せた。
若くして警部補にまで上り詰めたこの男は、ベテラン刑事さながらの表情をよくする。
メイシーはフレミングの肩を叩くと言った。
「いけすかねぇ餓鬼だが、腕だけは確かだからな。きなくせぇ奴だと思っていたが、クロフォード伯爵と一緒にいるところを社交場で見たって情報もあるし、あの邸宅も間違いなくクロフォード家の所有物だ。身元を偽っているわけでもない」
パイプを咥えたまま、メイシーは女性の死体へ一歩近づいた。
検死を見学していた神父が気づいて振り返る。
その拍子に、香りのきつい紙煙草の匂いが鼻をついた。
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