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鏡のなかの黒
真夜中に合わせ鏡をすると悪魔が出てくるんだって。
小学生のころ、やってみたの。
そうしたらね、本当に出てきたのよ。
悪魔が。
それを鏡の中に閉じこめたの。
今でも悪魔を飼っているのよ。
「──鏡の中に?」
「ええそう。鏡の中に」
くすくすと彼女はわらった。
彼女がわらうと、わたしは居心地わるさを感じる。
決してきらいではないのに。いやなわらいかたではないのに。
「見たい?」
彼女はくるりとふりむいて尋ねた。挑発するような笑みをうかべて。
くっ、と奥歯をかみしめ、わたしは口を開いた。
「──見せて」
そう答えると彼女はくすりと笑い、かすかに目を細めた。こういうとき彼女の瞳はかすかに蒼く燐光をおびる。
「見たいの? 本当に?」
揶揄するように、うたうように、彼女は尋ねた。
本音を言うと悪魔なんて全然見たくなかった。わたしはホラー映画もひとりで見られない怖がりだ。
なのに頷いてしまった。居心地わるさを相殺するかのように、きっぱりと。
彼女は軽く小首を傾げ、ニッと笑った。
「いいよ。見せてあげる。うちに見においでよ。ただし、真夜中にね」
「真夜中になんて家を出られないよ」
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