修介1

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修介1

 足りていないものはある? ギョロギョロ動く目が気持ち悪い。修介はスクワットをしながら賞金首を捕まえる瞬間の夢を見る。いや、実際に賞金稼ぎなのだが。  1985年に違法登録者の一斉検挙があったが、どういうわけか彼は正式登録者として認可が下りてしまった。  足りていないものはある? スクワットは続いている。  トイレは済ませたし、神様にお祈りもした。目標が現れる場所は12番地の春木屋という汚い居酒屋の地下で、そこで0時を回った時には人肉解体ショーが行われる。  足りていないものはある? この情報がガセってことはないと修介は鼻から信じ切っている。  うだるような暑さ、誰もいない交差点に水分をたっぷり含み、べっとりとした風が横切っていく。  ねぇ、足りていないものは? ここも日本、あそこも日本。修介はスクワットに躍起になっている。  2008年、不法入国者が流入、クーデターが起こり、アメリカは神の国と呼ばれた日本を突き放しつつ、上手くコントロールした。  日本独自の通貨がNSAの手引きで流通し、正常な神の国の人々は地下に潜りフリーエネルギー革命と共に独自の生活を手に入れている。  上の世界よりも余程充実しているようだが、修介がそのコロニーに入れる筈もない。  違法手術を繰り返して全身をサイボーグ化し、賞金稼ぎの資格があったことを人口脊椎に取り換えたタイミングで思い出した。  あれからどれくらのい月日が流れただろう。  ショービジネスとして存在しているこの国に気付いているものは果たしてどれだけ上の世界にいるのだろう。  
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