埋葬の先の先

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 ファミレスを出てしばらく車を走らせると、突然アサコさんが「ソフトクリームが食べたい」と言い出した。  その辺の地理に疎かったおれは、とりあえず道の駅なら売っているだろうと、カーナビを頼りに道の駅を探すことにした。アサコさんとは違って普通の会社員であるおれは、本来アサコさんを送り届けてすぐに事務所に戻らなければならない。けれど働かない頭で事務仕事をするよりは、アサコさんに連れ回されたという言い訳のきくこの方が都合がよかった。  ほどなく着いた道の駅では、ソフトクリームののぼりが誇らしげに風を受けていた。  人気の店なのか、車から店舗内を見る限り、客の入りは多そうだった。  騒ぎになるのもまずいから、おれが代わりに買いに行くか。思いつつ後部座席に身体を向けると、まっすぐなアサコさんの目がおれを見ていた。 「どうかしたんすか」 「ん? コウちゃんも食べる?」 「……や、おれはいいっす、けど」  ふいと視線を外して車を降りる用意を始めるアサコさんに、おれは上手く言葉が紡げずにもごもごと返した。  変装とまではいかないが、目立たない程度に帽子とサングラスを装備するアサコさんを、おれは黙って眺める。  用意が済むと、アサコさんは濃いスモークの貼られたミニバンのドアへ、躊躇いもなく手を伸ばした。 「コウちゃんさぁ」 「え!」  ドアを開ける寸前、アサコさんがその姿勢のままおれの名前を呼ぶのに、おれは小さく飛び上がった。  アサコさんはドアへ掛けた手を一度離し、けれど振り向かなかった。 「コウちゃんさ、開けるのも開けられるのも恐いんでしょ。コウちゃん、臆病だもんね」 「え……」 「でもさ、自分で選んだ道じゃない。胸張って開けてきたらいいのよ」  きっぱりとした口調でアサコさんはそう言うと、今度は勢いよくドアを横に引いた。  スモークフィルムの貼られた薄暗い車内は一瞬にして太陽の光を取り込んで、目が眩むほど明るくなる。 「あ、アサコさん、もしかして……」  颯爽と光の中へ降り立つアサコさんへ吸い込まれるように溢すと、アサコさんは掛けていたサングラスをわずかに下へずらして、「あたしを誰だと思ってんのよ」と笑った。
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