埋葬の先の先

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 数分後、車に戻ってきたアサコさんは、ミックスのソフトクリームを二つ手にしていた。  「風が強いからすぐ溶ける」と慌てながら、その一方をおれへ押し付けるように渡すと、満足そうに後部座席へ腰を下ろす。 「コウちゃんは頭が固いわよね。世の中にはゼロとイチ以外もあるのよ? ほら、あたしみたいにさ」  半分一人言のように言いながら、アサコさんはソフトクリームをべろりと舐めた。  おれは手の中で崩れ始めているソフトクリームに気がついて、アサコさんに倣って豪快に舐めてみた。  舌の上ではチョコレートのほろ苦さとバニラの甘さがじんわりと広がって、なんだか無性に美味かった。
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