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十年ぶりに訪れた母校というやつは、特になんの代わり映えもなく、そこに建っていた。
案内のはがきによると、午後集合でタイムカプセルを掘り返し、その後居酒屋に移動して同窓会をするのだという。出欠をとったり会費を集めたりというのも同窓会の前にやるようで、タイムカプセルの開封式は半ば自由参加の状態だった。
懐かしい顔との再会をすでに果たしたらしいやつらは甲高い声をあげて、グラウンドのあちこちで固まり、はしゃいでいる。うちのクラスの連中と仲が良かった他クラスのやつや、見物に来ているらしい部外者で溢れるグラウンドの人波に紛れて、おれは遠巻きに発掘作業を眺めた。
「知ってる? 楓の木の下には、死体が埋まってんだよ」
「馬鹿、それ言うなら櫻でしょ」
おれのクラスがタイムカプセルを埋めたらしい楓の木の下。野球部だった男たちが忙しくシャベルを動かすのを取り囲むように、クラスの中心にいた女たちが声を立てる。
そのままわいわいとしばらく掘り進め十分程たった頃、ひときわ大きな喚声が上がった。
掘っていた男のうちの一人が上半身を穴へ突っこみ、土まみれになった楕円形のケースを引っ張り出すと、辺りは一斉に拍手や指笛で湧き立った。
「やばいやばい、まじであったわ」
「すごくね、これ。ちょっと緊張してきた」
どいつもこいつも口々にやばいとすごいを繰り返し、ひたすらに興奮を吐き出している。けれどおれの心は、自分でも驚くほど凪いだままだった。
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