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「ええと、今回連絡とれて欠席なのが、多田と松木さん、藤村でしょ。返事が来なかったのが、佐々木と百井さん、かな」
「来られない人の分は、先生に預かってもらおっか」
「だね。最後にこっちの箱に移そ」
今回の企画者である数人が同窓会の出欠名簿とクラス名簿を見比べながら打ち合わせをしていると、ついにタイムカプセルのケースが開けられたらしく、一斉に木の下は人だかりでいっぱいになった。
歓声と共に、出席番号順に詰められた一人A5サイズほどの薄い封筒が、それぞれの手へと帰っていく。その姿に、ついにこの時がきたかと、わずかに指先が震えた。
自分の封筒を手にした面々は、グラウンドに散らばりながら、各々十年前の自分との邂逅を楽しんでいるようで、先程まで人で溢れていた楓の周りには、一人の姿も見られなくなっていた。
今だ。
そう思ったおれが、残りの封筒が積まれている山へ足を進めた、そのときだった。
「光……?」
よく通る低い声が、おれの名前を控えめに呼んだ。
「光、だよな? 百井光」
それはおれの名であると同時に、おれが十年前に葬り去った、一人の女の名前だった。
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