埋葬の先の先

8/10
前へ
/10ページ
次へ
 おれが周りの女の子とは違うということに気がついたのは、小学校に上がる前くらいのことだった。  周りの女の子や姉ちゃんのように髪を結ばれたり、スカートをはかされるのが嫌でしょうがなかった。  欲しいおもちゃはブロックや車やロボットで、幼稚園の男の子に混じって遊ぶ方が何倍も楽しくて、それがあるがままのおれだって気がしていた。  その感覚は一歳歳をとる度、環境が変わる度にどんどん増幅していって、中学へ入り身体が大人へと移り変わっていく時点で、大きな嫌悪感へと姿を変えた。  どんなに髪を短く切り他の男の子と同じ格好をしたって、女の子のように変化していく自分の身体。  背も高く胸もあまりなかったおれは男の子と思われることも多かったけれど、それはあくまでもボーイッシュな女の子という見方の範囲での話だった。  高校の卒業式の日。ずっと抱えてきた気持ちのまま、おれはタイムカプセルに百井光という女を埋めることにした。  過去も家もなにもなくていい。女の自分と一緒に、女の自分に纏わる全てを捨て去るつもりで、地元を出た。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加