第三章 まとの蛍

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第三章 まとの蛍

【この章の紹介文】「おもひきやまとの蛍のしるしなきしみのすみかとなさんものとは」という樋口一葉の歌。この歌にはたしてどれほどの無念と失墜感がこもっていることでしょうか。経済的に八方ふさがりの連続のような人生、女性であるがゆえの諸々の束縛…。みずからが小説に記したような生き方、言上げした本懐をなかなかつらぬくことができません。「お金がない」ということがどれほど辛いことか…文芸も何も、およそすべてを台無しにしかねません。この心身の桎梏は一葉のみならずプータローこと「私」にも共通のことであることは既に前章で自明のことでしょう。さて、以降二人の本音の語らいを綴ってまいりますが、しかしそもそもこのワープによる出会いを介在したのは果して誰…?いや何だったのでしょうか?それはお互いが持っていた鬱屈の心だったのか、それとも理不尽な世に抗う姿勢だったのか…よくわかりません。とにかく、ここでのひとときの「共有」を経て、二人はいささかでも充足されるに至ります(特にプータローさんの方が)。その折り二人の会話と心模様の変遷をどうぞお楽しみください。以下お進みください。
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