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第二章 互いの身上書
【この章の紹介】奇跡の出会いから一呼吸を置いて一葉女史の往時の実像へと迫って行く。彼女の懊悩のありどころへと。なぜ出会った彼女はこうもうっ屈し、時に怒り、悲しみに沈むのか。そこには以外ににもこの「私」と称する、彼女とは比べるべくもない低俗な人物と共通するものがあった。不正義で不条理な(?)世の中に抗っているようでもあり、みずからに怒っているようでもある。史実においてやがて彼女はそこから脱出し、「にごりえ」のお力のような、いわゆる世にイルリーガルな人たちとも共有の想いを抱くにいたるが、それは彼女が低俗化し世俗化したというのではもちろんない。自分を縛り付けていた世間や他人の目からみずからを解放した時、審美の極地を知り得たがためと思われる。その審美のさまを最後には描きたいのだが(但しこれは当作品の続編となる「一葉恋慕・明治編」でのこととなります)、さて今は…女史も「私」なる人物もいまだプロセスの真っ只中である。しかしそのプロセスこそが肝要であり、人に少なからぬものを与えるのではないだろうか…。以下お進みください。
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