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猫を捨てた。
人非人?でもちゃんと次の飼い主を見つけたさ。
「無責任過ぎるわよ。もっと心の底から滅茶苦茶反省しなさいよ!」
保健所に連れて行くと抱き上げた手から猫をさらい、叱りつけてくるのは俺の彼女だ。結局次の飼い主にもなってくれた。俺に愛想は尽きただろうが猫への愛情は別のようだ。いい彼女だな、もうすぐ元がつくけど。
彼女のことは捨てたと能動的に言っていいのか、捨てられたと受動的のほうが正しいのか判断つかないが、俺は少し前から心を離していた。そういう態度を取られ続けて、彼女も多分疲れたのだろう。言葉には出さないが互いの間に漂うのは諦めだ。
これは内緒だが、俺の友人で彼女に横恋慕している奴がいる。そいつにさり気なく言っておいた、俺たちもうダメになりそうだって。あとは奴の腕次第ってところじゃないか。
え、彼女を友人にスライドさせるなんてとんでもないって。
うーん困ったなぁ、別に良い人と思われなくてもいいんだよ俺。気分を害したなら申し訳ないけど、素直な自分の気持ちなんだから許してほしいな。
一応いっておくが俺の友人は気持ちのいい奴で、俺なんかより奴と一緒になったほうが彼女も幸せだと思うんだ。とはいえ恋愛なんて周りが何を言ったって本人の気持ち次第だからね。俺との関係が終わった後、行動を起こすのもそれを受けるのも、はたまた拒否るのもも、もう干渉できないからな。
とにかく、一番の気がかりだった俺に関わる生きているもの、猫と彼女がどうにか片付きそうで気持ちが大分すっきりした。
両親は既に他界している。兄弟はもう何年も連絡しておらず、家族はいないと同じだ。
あと残っている無機物なんて簡単だ。
荷物の整理はすぐついた。売ったり人に譲ったり捨てたりして、マンションを退去するときは寝袋一つとリュック一つ、あとスーツケース一つ分の荷物が俺の全てだった。
管理人の立会いの下鍵を返した。部屋のクリーニング代は入居時に収めた敷金から引く契約なので、この時点でもう誰とも何処とも連絡を取ることはない。
スマホも捨てようかと思ったけど、俺腕時計ないんだよね。今までこれで事足りてたから。だから時計代わりに持っていることにした。
でも正解だったな、君という友達にこの文章を打つことが出来るから。日記の中の自分は最初から最後まで一緒にいてくれる最高の友だと実感するよ。
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