下人の行方をなぞる旅路さ

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 住居を失って見上げた空は澄んでいた。いかにも「旅立ち」といった日にふさわしい青さだった。  道行くコンビニのゴミ箱にスーツケースの中身を少しずつ捨てていく。一軒に全部は忍びないから、数軒に分けて捨てていったさ。中身は生活用品だから本当申し訳ないんだけど、昨今ゴミを出すのもきちんと仕分けが必要だろう。今日は何ごみの日だからこれ捨てようなんてチンたらやっていられなかった。業者に頼めばいいんだろうけどスーツケース一つ分の量だしね、許してチョンマゲって心の中で手を合わせて店外のゴミ箱に押し込んだよ。  スーツケース自体は駅前のリサイクルショップで500円の値がついた。さっき食った弁当がそれさ。  寝袋にリュック一つ、Tシャツ、ジーンズにスニーカー。どうみてもバックパッカーな姿で、青春18切符を買う俺は、やっぱりどうみてもいい年して自分探しの最中である根無し草にしか見えないだろう。  とりあえず南、暖かい地域へ向かう。リセットする人生は寒い北の国ではなく、陽気なサウスタウンに迎え入れられたいと思ってね。まぁ全ては俺の勝手なイメージなんだけど。  でも現実は厳しいから、背景くらいは陽気でいきたいんだよ。短期決戦のゲームでこれくらい選んでもいいだろう。
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