下人の行方をなぞる旅路さ

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「ええ、被害者は二十代から三十代前半と見られる男性です。暴行を受けたようで全身に殴られた跡が多数あります。物取りの仕業か身ぐるみはがされていて、発見されたときは全裸でした。所持品の類も見当たりません。身元の特定は難航しそうです。そちらに回しますので、司法解剖お願いします」  老婆に施したのと同じく下人もまた、その後誰かの餌食になったのだろうとは、殴られながら意識が飛ぶ寸前に思ったこと。  タイムリミット一週間を待たずして物取りに殺される最期を嘆く。  ただ自分の思い通りにはいかないのが人生だ。ああ、それなら俺は今正に、人生を謳歌しているとも言えるのだろうか?あと残り数分もない人生を。
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