X回目の遺書

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こうやって考えることも辛い程です。いっそあったことを忘れてしまいたいのです、思い出ごと全て捨ててしまいたいのです。 けれど私は、捨てたい物ばかり捨てられず、失くしたくないものばかり失くしてしまうのです。  それでは、この命はどうでしょうか。 私はもう、生きていたくない。もう何もないのです、何も無くなってしまったのです。 気休めで生きていくことは出来ても、どうにも生きた心地がせずに、思い出ばかりが私を苦しめるのです。  私は、命を捨てることは出来るでしょうか。 捨てたいだなんてこと、本当は嘘なのです、本当はもう一度取り戻したい。 けれどもう、どうしたらいいかわからないのです。 どうしようもない気持ちばかり、捨てられずにいるのです。  この空っぽになった私の命ですら、自死の間際に捨てた事を後悔するのでしょうか。 その答えがどうしても出なく、こんなに苦しい毎日を生きています。    私には、きっと勇気が足りない。 でもそれは、夢や、恋や、そんな大事な物を捨てたあの日に、一緒に捨ててしまったのです。  けれどもし、私がこの世を去れたのなら、この手紙は誰かが読むことになるはずです。 どうか、最後の私の勇気を、ほんの少しだけ、褒めてください。 そうしてもう一つ、私は私によって死ぬのです。私以外の他の誰のせいでもありません。 最後に』     
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