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実際に起こった現象にそろって突っ込みを入れる暗殺者たち。
それは、闇に生き、数々の人間を殺してきた暗殺者だからこその想いだった。
暗殺者すら唖然とさせる魔力の解放にしかし、アグニに背を向けていたミーナは、いったい何が起きたのか分からない。だからこそ、動けない。
(な、なに……? 一体なにが――ヒイッ!)
そのとき、一つの手がミーナの頭を掴んだ。
「おい、そこの……」
気付けば、ミーナの肩口からにゅう……と出てくる悪魔のようなアグニの顔。
それだけでミーナはガクブルだった。
「は、はひ?」
「教えろ。俺の昼飯を台無しにしたのは、お前か?」
「(ぶるぶるぶる!)」
全力で否定する。口がMみたいな形になっている。
「なら、だあれぇだあぁ?」
「ひぃいいぃいぃぃ!」
意識せず、ミーナは悲鳴を上げた。食べられちゃう! 本気でそう思った。
「あああ、ああああああっ!」
あまりの恐怖に言葉が紡げず、震える人差し指を突き出して、目の前の暗殺者を指す。
「アレ……か?」
「(こくこくこくこく!)」
「そうか、俺の昼飯を駄目にしたのは……お前かぁ!」
ゴアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアア……ッ!
魔力の質が粘着質へと変わり、アグニの深紅のアウラが暗殺者をべろりと舐め上げた。
途端に指をさされた暗殺者は短剣を取り落として、自分じゃないと否定し始める。
「ちっ、違う! 私ではない。そ、そうだ、あいつだ!」
ミーナに指を差された暗殺者は、違う場所で短剣を構えていた暗殺者を指さした。
「なぁあ! 俺ではない! そもそも威嚇しようと言い出したのはお前じゃないかっ」
仲間から指さされて焦った暗殺者は、また違う暗殺者を指さした。
「ば、ばかっ! 何も焚火を狙わなくてもよかったんだ。というより、火を狙えと言ったのは貴殿ではなかったかッ?」
仕舞いには、AがBを、BがCを、CがAをという具合に指さし合い、それを見た怒れるアグニは、ふしゅるる……と奇怪な呼吸音を響かせたのち、「そうか、良く分かった。要は、お前『ら』が悪いんだな?」という結論に達したらしく、「「「ヒィッ!」」」と仲良く悲鳴を上げる暗殺者たちを、「あの世に行って、俺が食べ損ねた居眠り狸に謝ってごいやゴラアアアアアアアッ!」と全員纏めて空の彼方までぶっ飛ばしたのだった。
もちろん効果音は『キラーン☆』である。
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