第一話

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 実際に起こった現象にそろって突っ込みを入れる暗殺者たち。  それは、闇に生き、数々の人間を殺してきた暗殺者だからこその想いだった。  暗殺者すら唖然とさせる魔力の解放にしかし、アグニに背を向けていたミーナは、いったい何が起きたのか分からない。だからこそ、動けない。 (な、なに……? 一体なにが――ヒイッ!)  そのとき、一つの手がミーナの頭を掴んだ。 「おい、そこの……」  気付けば、ミーナの肩口からにゅう……と出てくる悪魔のようなアグニの顔。  それだけでミーナはガクブルだった。 「は、はひ?」 「教えろ。俺の昼飯を台無しにしたのは、お前か?」 「(ぶるぶるぶる!)」  全力で否定する。口がMみたいな形になっている。 「なら、だあれぇだあぁ?」 「ひぃいいぃいぃぃ!」  意識せず、ミーナは悲鳴を上げた。食べられちゃう! 本気でそう思った。 「あああ、ああああああっ!」  あまりの恐怖に言葉が紡げず、震える人差し指を突き出して、目の前の暗殺者を指す。 「アレ……か?」 「(こくこくこくこく!)」 「そうか、俺の昼飯を駄目にしたのは……お前かぁ!」  ゴアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアア……ッ!  魔力の質が粘着質へと変わり、アグニの深紅のアウラが暗殺者をべろりと舐め上げた。  途端に指をさされた暗殺者は短剣を取り落として、自分じゃないと否定し始める。 「ちっ、違う! 私ではない。そ、そうだ、あいつだ!」  ミーナに指を差された暗殺者は、違う場所で短剣を構えていた暗殺者を指さした。 「なぁあ! 俺ではない! そもそも威嚇しようと言い出したのはお前じゃないかっ」  仲間から指さされて焦った暗殺者は、また違う暗殺者を指さした。 「ば、ばかっ! 何も焚火を狙わなくてもよかったんだ。というより、火を狙えと言ったのは貴殿ではなかったかッ?」  仕舞いには、AがBを、BがCを、CがAをという具合に指さし合い、それを見た怒れるアグニは、ふしゅるる……と奇怪な呼吸音を響かせたのち、「そうか、良く分かった。要は、お前『ら』が悪いんだな?」という結論に達したらしく、「「「ヒィッ!」」」と仲良く悲鳴を上げる暗殺者たちを、「あの世に行って、俺が食べ損ねた居眠り狸(プーヤン)に謝ってごいやゴラアアアアアアアッ!」と全員纏めて空の彼方までぶっ飛ばしたのだった。  もちろん効果音は『キラーン☆』である。
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