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「違う。いま起きたの」
のっそりと体を起こすミーナは髪に絡んだ落ち葉を払い、胸元に銀色のネックレスを仕舞って、赤くなった目をごしごし擦ると鼻をすすった。
落ち葉の隙間から顔を出すアリを見つめて、口を開く。
「あたしがここに居るってことは、夢じゃ、ないんだよね……」
「ああ、夢じゃない」
答えるアグニは、淡々としている。
「夢なら、良かったのに」
「そうだな」
「つめたいんだ」
「そうか?」
「そうだよ」
ミーナは少しの間を開け、生気の無い声を絞り出す様に再び口を開く。
「ねえ」
「なんだ」
「どうすれば、いいと思う?」
「……。どうすればって?」
「父様も母様も、皆いなくなっちゃったのに、あたし――」
「死にたいか?」
その言葉にミーナの肩がびくりと揺れた。ネックレスが隠れている胸元をギュッと握る。
「分かんない……。でも、父様も母様もあたしを逃がしてくれた。その時の言葉は『生きるんだ』って、『生きていて』って……」
「なら生きればいいだろ」
「何の為に?」
「おい……生きる理由を他人に求めるな。自分で見つけろ。そうじゃなきゃ、お前はお前を逃がしてくれた父ちゃんや母ちゃんに顔向けできねぇぞ?」
「でもあたしにはもう生きてる意味が――ッ!」
「それに、生きる事に大層な意味なんかねぇよ。飯食って、寝て、また飯を食う。生き甲斐ってことじゃねぇンだ、生きるってことは。お前の親はお前に死んでほしくないから『生きて』って言ったんだよ。それ以上でも以下でもねぇだろ」
そこまで言って立ち上がるアグニは、木々の隙間から漏れる陽光を見上げた。
「ただまあ、言いたいことはある」
ミーナはその言葉に反応して、アグニを見上げた。
「……なによ、偉そうに」
「生きるか死ぬかも判断つかねぇ奴よりましだと思うが?」
「ふんだ……」
少しふてくされた声だった。アグニはため息もついでに言葉を続ける。
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