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「ふんっ。だからって、森の中なんだよ? 怖いじゃん、暗いの」 「暗いのが怖いって……お前なら大抵のモンスターに襲われても生き残れるよ」 「うっさい! これでもあたし女の子だしっ! 男が守ってくれるのが普通だもん!」 「普通、ねぇ。普通、オコチャマンが覚えられる魔法じゃないんだがな、銃火器精製魔法(イグニティア)は。自分の力量に応じて変化する魔法――伝説級の進化式高等魔法だぞ、あれ」 「だからっ! オコチャマンじゃないって証拠じゃん!」 「でもあの魔法って、あれだよな?」 「な、なによ……?」 「本物の銃器は、ある程度魔力を持っている奴ならその魔力を障壁にして弾の威力を殺すから、ダメージをほとんど与えられない。だから、銃器愛好家だった何処かの魔導士が銃の凄さを世の中に認めさせるために銃火器生成魔法(イグニティア)を作り出したんだよな?」 「そぉだよ。かっこいいじゃん、鉄砲っ!」 「でも、それなら撃つ弾も鉛玉じゃなきゃ意味なくねぇか? あれ、撃ちだすのは魔力だよな。結局、鉛球打ち出す鉄砲は使えないってことじゃねぇか」 「でで、でも! 魔法としては凄い魔法なの! あたし、いっぱい勉強したもんっ!」  ミギャーッと喚くミーナをアグニは「はいはい、わるかったよ」と適当にあしらいながらグッと背伸びをした。上体を回す様に軽いストレッチもついでにする。 「ま、そんな事は置いといて。ミーナも出てこいよ。飯にしようぜ」  ストレッチし終わると、昨晩焚きっぱなしでもう炭しか残っていない焚き火跡に枯れ木と枯れ葉をくべ、くべた枯れ葉に油と火打石で火をつけた。火が小枝に燃え移るのを確認してから左腰に提げた皮袋に手を突っ込み、葉で包んだ半生の燻製肉と胡椒、硬い黒パンを二つ取り出して、半生の燻製肉を大木から失敬した生木に付き刺して火に当てる。 「早くしねぇと、食っちまうぞー?」  枯れ葉から枯れ木に移った火がその大きさを増し、適当に振りかけられる胡椒が火に爆ぜる。段々と美味そうな匂いが鼻孔をくすぐり始めると、朝からギュルリと腹を鳴かせた。 「さすがは燻製肉。干し肉とは比べ物にならない良い匂いだー」
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