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 わざとらしくアグニが口にするのは、そうすればミーナも出てくるだろうと思っての行動だった。けれど、ミーナからの反応はない。いつもなら朝ごはんを作り始めれば飛び起きてくるというのに、今日は毛布にくるまったまま、膨らんだ頬にも変化がなかった。 「ふんだ。アグニなんて知らないもん。ばか、あほ、えろ、すけこましのすっとこどっこいのとうへんぼくのでくのぼう」  散々な言われ様に溜息が出る。 「そのスケをコマせていないから、お前は怒っているんだろうに……」  毛布で芋虫の様になった相方にチラと視線を動かして、小さくため息を吐くアグニ。それからちょうど良いくらいに焼けた肉を火から離した所に移して、後ろ頭を掻くと立ち上がった。のそのそと洞に戻る自分の滑稽さに半ば嫌気がさすが、この状況で旅を続けることを考えれば、滑稽さも不和を取り除くために必要な薬だと納得するしかない。 (良い薬は苦いもの……良く言ったもんだ)  洞の中へと戻ったアグニが陣取るのはミーナの上。覆いかぶさるように両腕の間にミーナの頭を持ってきて素直に謝る。 「俺が悪かった。機嫌直せよ、ミーナ」 「やっ! いつもそう。アグニは謝ればいいと思ってるもん!」 「なら謝らなくてもいいと?」 「あほう。アグニには誠意が足りないって言ってるんだよぅ」 「だからこうして謝ってるじゃねぇか」 「なにその投げやりな態度はって言うかあたし怒ってるし!」  ミーナのほっぺたがますます膨らんでいくのを見て、アグニは溜息を吐きたい気持ちをぐっと堪えた。どうしたもんかと考えてから(これしかないか……?)と半分諦める。 「分かった。なら誠意を見せてやろうじゃねぇーか」 「へー……どうやって?」  アグニは、ライトブラウンの長髪が隠す小ぶりな耳に唇を寄せると、こう囁いた。 「今度 ―― してやるってのはどうだ? もちろんミーナが満足するまで、な?」  すると、ミーナはそのまま発火するのではと思うほど瞬間的に顔を真っ赤にした。 「あ、ああ、アグニのあほぅ! べつにあたしはそういうことを求めてるんじゃないんだからね! ちがうんだからねっ!」 「なんだ、今からがいいのか?」 「ち、違うし! 話しがずれてるって言ってるんだし! てか、朝っぱらから何言ってるのって話しだなんだよっ!」 「でも、残念だったな。ちょうど肉に火が通った所なんだ」
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