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…いつか、圭介と、一緒に住むかもしれない。
恋人として付き合っていったら自然なことだ。
だけどなんだか、想像ができない。
「ん、美味しい!圭介、料理できるんだね」
「まじか、よかった。一人暮らし何年かしてるからなー。あとオカに何冊か料理本もらったんだ」
「…へぇ、オカくん、料理しそうだもんね」
オカ、という言葉に少しだけ心臓が跳ねたけど、なんでもないみたいに笑顔を作る。だって実際に、なんでもないのだ。私の気持ちが、あの時少し揺れただけ。
「そー、アイツ見た目通りで、バーベキューやれば肉焼く係だし、鍋やれば鍋奉行だし」
そう笑いながら言う圭介の方を向きながら、私の頭にはオカくんが率先してトングを持ったり鍋のアクを取る姿が浮かんでいた。世話好きな彼のことだから、きっとみんなの皿に取り分けてくれるかもしれない。その役目がとてもよく似合う。
「みんなで鍋とか、やるんだね」
「うん、いつも俺ん家でやるよ」
「オカくん、料理上手なんだ?」
「アイツ、結構上手だよ。妹と一緒にケーキ焼いたりもするみたいだし。この前インスタに乗っけてた」
オカくんのインスタが気になってしまって、食事中にもかかわらず携帯に手が伸びかけた私の名前を圭介が呼んだ。
「優佳、……なんか今日、オカの話ばっかりだな」
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