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全身性炎症反応症候群への治療法としては、原疾患に対する治療、組織障害に対する治療、高サイトカイン血症に対する治療がある。しかしいずれの治療法にしても反応の対象、つまり本疾患の原因が酸素である為、確実な治療法は見つかっていない。
近年、酸素濃度10%以下の環境ならば炎症反応を起こさない事が分かってきた。だが同時に酸素欠乏症となるリスクは98%である為、安易に患者を低濃度酸素状態に置くのは危険である。酸素に代わる気体が発見されれば延命及び治療法発見に繋がるが、その様な気体は見つかっていない。
シュー
シュー
シュー
酸素濃度の薄い空気。人工的に作り出された気体で充満した部屋の中。そして、防毒マスクを付けなければあっという間に全身に発疹が出て。心臓発作と呼吸困難で君はぽっくりと逝く。蜉蝣は生まれて3日で死ぬと言われているが、それより脆弱な君の身体。人工的気体と防毒マスクで細々と生き永らえる意味は何かと問われれば。
君の恋人である彼に、そう望まれているからだ。
この部屋にあるのは、真っ白なベッドと酸素濃度を調整する機械。小さなタイマー。そして、分厚いガラスから見える部屋の外へと通じる白い電話機。電話機から発信音が鳴るのは、1日に数回程度。発信者はいつも彼だ。
話す内容はいつも同じ。
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