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朝の挨拶に始まって具合はどうだの、息苦しくないかだの。朝食の時間だの。分厚いガラス越しに、受話器を片手に他愛ない会話を続けている。なぜ電話越しでかって?彼も酸素ボンベを着けなければこの部屋に入れないのだ。
だが、勿論。酸素ボンベを着けさえすれば、彼は君の部屋を訪れる。それは君が少しばかり甘えたな雰囲気と声で彼に来訪を訴えればそれでいい。
笑い声と同時に受話器を置く音。ベッドに腰かけて待っていれば。
シュー
シュー
シュー
酸素ボンベをつけた彼が部屋に入ってきてくれる。
甘えたいと言ったからには、君は来訪してきた彼に甘えなくてはいけない。まず君は彼から酸素ボンベの制限時間を聞く。それが、一緒にいられるタイムリミット。大抵は5分から15分だ。もっと長時間の物も用意されているが、それは長時間甘える、即ちソレを致す時にしか使われない。
こんな時にソレをする余裕があるのかだって?それは君次第だ。
さて、ともかく君は彼から酸素ボンベの制限時間を聞く。今のボンベは15分が限界だ。それを聞いてから、君はゆっくりと彼の腰に手を回して抱きつく。
君が考える事はいつもこう。彼が背負う背中のボンベがいつも邪魔だ。この硬くて冷たい感触が邪魔だから、彼をきちんと抱きしめた感覚を抱けない。彼は何も言わずそのまま君の頭を抱きかかえて。そしてこう呟く。君の着けている酸素マスクが邪魔だと。
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