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「冬馬くんも、みなさんも、喫茶リリィの大切な一員なんですよ。これからもよろしくお願いしますね! あっ、そうだ。昨日新しいケーキを作ってみたんです。ぜひ試食していただけないでしょうか?」
「いいねえ、いただくよ」
「では、さっそくご用意しますね」
さゆりさんは冷蔵庫からケーキを取り出すと、五つに分けてお皿に載せた。
……五つ、ということは、俺の分もある。
「冬馬くんも、どうぞ」
「ありがとうございます、いただきます!」
さゆりさんが作ったのは、体に優しそうなニンジンのケーキだ。
言われなければ、野菜が入っているなんて気づかないほどにおいしい。
添えられている生クリームがまた優しい素朴な味で、なぜかほっとする。
「さゆりさん、このケーキすごくおいしいです!」
感想を伝えると、さゆりさんはとても嬉しそうに笑っていた。
「ありがとう。もう少し改良を加えてからメニューに追加しますね。せっかくだからもっとヘルシーにしたいなぁと思っているんですよ」
ああ、なんてこの人は素晴らしい女性なのだろう。美人で、優しくて思いやりがあって、癒し系で、料理が上手だなんて……。完璧なひとだ。早くお嫁さんにしたい。
さゆりさんの笑顔を目にするたびに、優しくしてもらうたびに、気持ちが高ぶって「結婚してください」と告白したくなる。
その都度、仙人のように心を無にしてぐっとこらえる。まだ告白するタイミングではないし、何より、俺はまだ結婚できる年齢じゃないからだ。
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